社会の窓からこんにちわ

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【2015.04.27 Monday 】 author : スポンサードリンク | - | - | - |
ゲド戦記◇ハイタカ流 爆睡座禅鎮。
ある意味ネタバレ画像。
ゲド戦記

<2006年/日本/115分>


解説: アメリカの女流作家アーシュラ・K・ル=グウィンの「ゲド戦記」シリーズを、スタジオジブリが映像化したファンタジー・アニメ超大作。宮崎駿監督の実子である宮崎吾朗がメガホンを取り、少年アレンと大賢人ゲドの旅を通じて混迷する時代を生き抜くためのメッセージを投げかける。V6の岡田准一、菅原文太ら新旧の実力派が存在感ある声の演技を披露するほか、主題歌と挿入歌も担当した手嶌葵の圧倒的な美声にも心奪われる感動巨編。

ストーリー: 多島海世界のアースシーでは、聖なる生物の竜が共食いを始め、農民は田畑を捨て、職人は技を忘れていくなどさまざまな異変が起こり始めていた。やがて人々が魔法を信じることができなくなったとき、大賢人ゲドは世界のバランスを崩す者の正体を突き止めるための旅に出て、国を捨てた王子アレンと出会う。


監督:宮崎吾朗
原作:アーシュラ・K・ル=グウィン
脚本:宮崎吾朗 、丹羽圭子
音楽:寺嶋民哉

声の出演:
岡田准一(アレン)
菅原文太(ゲド)
手嶌 葵(テルー)
風吹ジュン(テナー)
小林 薫(国王)
夏川結衣(王妃)
倍賞美津子(物売り)
香川照之(ウサギ)
田中裕子(クモ)

原作も読んだことないし、はじめはそれほど鑑賞意欲はなかったんだけど、参考にと思って事前にYAHOO!映画のユーザーレビューを軽くチェックしてみたところ、目を疑うような酷評の嵐。
なにせ5点満点で平均2.3点という有様であった。ちなみに、他のジブリ作品は軒並み3.5以上。
ひとのつけた点数なんてアテにはならないし、ソフト化されたらまた点数も上がったりするかもしれないが、とりあえず劇場に観にいった人のうち、少なくない人数がガッカリしてるんじゃないか、ということは推測できる。

そうなるとがぜん観てみたくなるから、人間というのは不思議だ……って、人間全体に適用できるほど普遍的な反応じゃない気もするが。ともかく、勇んで劇場へ向かったのだった。


上の「解説」にもあるとおり、監督の宮崎吾朗は宮崎駿の息子さんだが、本作の監督を務める以前はジブリ美術館の館長をしていたらしい。つまりアニメ制作の実務に関しては、知識はあるかもしれないが経験ゼロということで、ジブリも思い切った人選をしたものである。
つまり、いくら宮崎駿の子供だとはいえ、素人の初監督作品というわけで、いつものジブリ作品と同じに考えて観ては、そりゃYAHOO!のレビューも荒れるだろう。
いいほうにも悪いほうにも、期待しすぎてはいかん。
それを強く念頭において鑑賞したわけだが。

正直、設定がところどころ空回りしているような印象を受けた。
たとえば以下のような感じ。

主人公のアレン王子は、ときどき自分の凶暴性を抑えられなくなる性質らしく、冒頭で、父である王をナイフで刺し殺して逃亡の旅に出る。
ヒロインであるテルーは、親に虐待されて捨てられたために、顔に大きなやけどの跡が残っている。それがトラウマになっていて、他人が嫌い
アレンとゲドが立ち寄った街では、街中で平気で麻薬が売られていて、その気になれば誰でも入手できる。

これらはもちろん「キレる若者」「アダルトチルドレン」「ダメ。ゼッタイ。」といった、現代社会の諸問題を反映したものであろう。
それはわかるが、ちとダイレクトすぎやしまいか

ダメ。ゼッタイ。ガール
ダメ。ゼッタイ。


なおこのアレン王子、立派な王の息子であるというプレッシャーから、自分の中の良心にあたる部分から目をそむけ続けた結果、人格が分裂。それでこんなキレやすい若者になったり父を殺してみたりという設定なんだが、これも監督から見た、自身と駿の親子関係を反映してるんじゃないだろうか。実際のところどうなんだか知らないが、仕事にかかりきりで、家庭的なことは妻に任せっぱなしな王の描き方とか。
もしほんとうにそうなんだったら、ベタなことこの上ないわけだが。





この先はストーリーの最後まで触れていますので、知りたくない方はブラウザを閉じてください。
もう鑑賞済みのかた、もしくは鑑賞しないからいいやって方は、引き続きご覧ください。



父を殺し、彼の持っていた、魔法で鍛えられた剣を奪い取って国を飛び出したアレン。
狼の群れに囲まれて
「お前たちがぼくの死か」
絶体絶命なわりに悠長なことを言っているところを、たまたま通りがかったゲドに助けられ、一緒に旅をすることになる。
世界中で、竜が共食いしたり、魔法使いが魔法を使えなくなったりといった異変が起こっていて、
「世界のバランスが崩れたのが原因だ」
とにらんだ大賢人ゲドは、そのバランスを崩したものを探すために、あちこち旅をしていたのだ。

ところでアレンに名前を尋ねられたゲドは「ハイタカ」と答えるんだけど、彼は以後ずっと最後までその名で通し、劇中「ゲド」と呼ばれるのはたった1度きり。
この世界の人は通り名の他に<本当の名前>というのを持っていて、それを他人に知られるとえらいことになってしまうため、普段は通り名を使うことになっているらしい。
そういうわけなので、以下ゲドのことはハイタカと表記。


たどり着いた街で、少女が人さらいに襲われているのを見かけたアレンは、持ち前のキレやすさを発揮して賊を撃退するが、少女は礼も言わずに逃げ去ってしまった。
その後、海辺でうたた寝をしていたアレンは、人さらいの逆襲にあい、ボコボコにされたうえに奴隷として売り飛ばされそうになるが、「人探しの術」で飛んで来たハイタカに助けられる。
怪我を負ったアレンを連れて、ハイタカが旧知の女魔法使いテナーを訪ねると、そこにはアレンが助けた例の少女・テルーもいた。彼女はテナーの養女なのだった。

自分を助けるときに言ったアレンのセリフ
「命なんかいるか」
というのが気に食わなかったのか、
「命を大事にしないやつは大嫌いだ」
「近寄るな」
「そこをどけ」

と、恩人のはずのアレンに、ドM以外はとうてい歓迎できない態度をとり続けるテルー。
アレンもアレンで、何も言い返せないままうじうじと時を過ごすが、ある日草原でテルーが、持ち歌「テルーの唄」を歌うのを聴き、なぜか突如ぼろぼろと落涙
テルーもそれを見て心変わりしたのか、手のひらを返したように仲良く接するようになるのであった。って、若いものの心の動きはよくわからんよ。


さて、アレンやテルーを襲った人さらいは、クモという悪い魔法使いの手下であった。
永遠の命を欲するクモは、どうも過去にハイタカと因縁があるらしい。彼が街にいることを知ると、アレンとテナーをさらってハイタカを自分の城に呼び出した。
計略どおりにクモの城に飛び込んだハイタカを待ち受けていたのは、まんまとクモに操られたアレンであった。
王子をなんとか正気に戻すことに成功したものの、ハイタカはいきなり魔力を失って、あっけなく捕えられてしまう。クモの城の中では、魔法を使えなくなってしまっていたのだ。

ハイタカとテナーは夜明けとともに殺されてしまうというのに、せっかく正気に戻ったアレンはボーっとしたまま動かない。そこへ、煮え切らない主人公に喝を入れるために、テルーがやってきた。
助けに行かないと2人とも死んでしまうと訴える彼女に、
「でも死ってよくわかんないし」
すっとぼけた答えを返すアレン。
もうこいつ放っとけよと誰もが思うシーンであるが、そもそもそれ以前に、ここまでの展開がかなり平板というか退屈なので、半数ぐらいの客が、誰が死のうがどうでもいいよという投げやりな気持ちになっていることも事実。
それより観客にとっては、あとどれくらいで終わるのかというほうが切実な問題なのであった。

説得の末、理屈で納得してというよりは、好きな女が励ましてくれたからという感じで、ようやくハイタカ救出を決意するアレン。
テルーとお互いに<本当の名前>を告げあうと、画面にぶわーっと竜が現れて見得を切るのであった。どういう意図の演出なのかはよくわからないが。

さてハイタカとテナーは、城にある物見やぐらのてっぺんに引き出されていた。
どうやらクモは、ここから突き落として殺そうというつもりらしい。
しかしハイタカは、やぐらのフチに立たされても、平然と余裕を保っているのであった。
さすが大賢人、ただ捕まったのではなく、何か奥の手があったのか。
「心配は要らない」
静かにテナーに語りかけるハイタカ。
「聞こえる、希望が近付いてくるのが」

その希望の正体はなにかというと、二人の救出に駆けつけたアレンとテルーであった。


他力本願か。


ラスボスを前に、父である王を殺したときにアレンが奪った魔法の剣、人さらいからテルーを救うときでさえ断固として抜けなかったその剣が、さすがにクライマックスだしというサービス精神のおかげで、見事に鞘ばしってみせる。
そうでなければ、さっきまで死の意味がわからないとか言ってた王子が
「抜けてくれ、命のために!」
都合のいいことを叫んだ程度で抜ける理由がわからない。

ともかく、ひらめいた魔法の剣は、クモの右腕をばっさりと切り落とす。
するとクモは、みるみるシワシワにしぼんでいったではないか。若さを失ったクモは、もはやこれまでとテルーをさらい、さらに高い塔の上へと逃げていく。
アレンはすぐさま追いかけるが、ちなみにこのとき、助けられたハイタカはただ成り行きを見ているだけ。
大賢人の選考基準が知りたくなるほどの、圧倒的な無策ぶりを見せつけてくれた。



さてここからは、いよいよ本当にラストシーンなので、知りたくない人はブラウザ閉じてください。ここまで書いておいて何だ、という声もあろうかと思うが。




クモを追い詰めたアレンは
「死から逃げようとするのは、生から目をそらすのと同じだ」
と、お前が言うなといわれたら反論できないような言葉の数々で、必死に説得を試みるが、それもむなしくテルーは絞め殺されてしまう。
「しーんだ、しーんだ……」
若さとともに知能も失ったクモの、のどかなつぶやきが流れるが、どっこいテルーは生きていた

怒りの形相でむっくり起き上がるテルー。
登場人物および観客一同、何が起こっているのかと唖然とする中、彼女はその姿をみるみる変えていく。
何と彼女の正体は、巨大な竜なのであった。

「しーにたーくなーいーぃ」
反則的な顔芸とともに哀願するクモであったが、
「闇に帰れー!」
怒りのドラゴンブレスを喰らってあえなく蒸発。
命を大事にしないやつは殺してやるってことで、いちばん怖いのは彼女なのだった。

クモの死とともに城が崩れ始めるが、竜となったテルーはアレンを乗せて飛び去っていく。それを見送るハイタカとテナー。
「大丈夫だ、あの子たちには翼がある」

いっぽう地上に降りた竜は、テルーの姿に戻り……って、なぜ服までもとどおりになっているのか。そんな魔法はいらない。
「父殺しの罪を償うために、国へ帰ろうと思う」
と語るアレン。

そこへ、ハイタカとテナーが迎えにやってきた。
さっきのは、若い2人の旅立ちを見送ったんじゃなかったのか。

そしてそのままテナーの家で畑仕事を手伝うアレンとハイタカ。
国に帰るのは、すぐにって意味じゃなかったのか。

2重3重のグダグダの中、エンドロールでようやくハイタカとアレンは旅に出るのであった。
原作もこんな感じなんでしょうか。


この何ともいえないグダグダな感じ、主人公である王子様の性格によるところが大きいと思う。ちょっとまとめてみると、以下のような感じだ。

☆キレやすい若者であるが、ふだんはウジウジしているうえ受け身な性格。低血圧そうな感じで、しゃべりも決断力もハッキリしない。
☆父を殺して「とんでもないことをした」と口では言うものの、後悔のそぶりもなくケロリとしている。
☆父殺しについて、「なんで殺したのか、自分でもよくわからない」と激白。
☆でもテルーの歌を聴いて、いきなり泣き出す感受性の持ち主。

どうだろう、主人公だというのにこのわからなさ。
ほんとうに一人の人間なのかと思うぐらい、場面に応じて性格が変わって見える。

タイトルで「戦記」となっているくせに、ほとんど活躍の場がない大賢人ゲドもどんなもんだろう。なにせ振り返ってみれば、後半はただとっ捕まっていただけという体たらくである。
最終的には、彼が探していた「世界のバランスを崩した原因」もどこかへうっちゃられてしまい、根本的な問題は解決しないまま映画が終わってしまう。
しかし「魔法使いが魔法を使えなくなった」という割には、ハイタカやクモはモリモリ魔法を使っていた気がするが。

なんだかいろいろ釈然としないものが残る映画であったが、とりあえず、原作者の名前はものすごくかっこいいなと思った。
【2006.08.23 Wednesday 01:59】 author : 猫パンチ | 映画 カ行 | comments(4) | trackbacks(4) |
吸血鬼ゴケミドロ◇人間なんてララーラーララララーラ(唄:高英男)。
吸血鬼ゴケミドロ
吸血鬼ゴケミドロ
1968年/日本(松竹)/84分


スタッフ
監督: 佐藤肇 サトウハジメ
製作: 猪股尭 
脚本: 高久進 
小林久三 
撮影: 平瀬静雄 ヒラセシズオ
音楽: 菊池俊輔 キクチシュンスケ
美術: 芳野尹孝 ヨシノノブタカ
編集: 寺田昭光 テラダアキミツ
録音: 中村寛 ナカムラヒロシ
スクリプター: 小尾健彦 
照明: 青木辰夫 アオキタツオ

キャスト(役名)
吉田輝雄 ヨシダテルオ (杉坂英)
佐藤友美 サトウトモミ (朝倉かずみ)
北村英三 キタムラエイゾウ (真野剛造)
高橋昌也 タカハシマサヤ (佐賀敏行)
キャシー・ホーラン  (ニール)
高英男  (寺岡博文)
加藤和夫 カトウカズオ (百武)
楠侑子 クスノキユウコ (徳安法子)
山本紀彦 ヤマモトノリヒコ (松宮)
金子信雄 カネコノブオ (徳安)
西本裕行 ニシモトヒロユキ (機長)

解説
「キャプテンウルトラ」の高久進と、「若社長レインボー作戦」の小林久三が共同でシナリオを執筆し、東映の佐藤肇が他社で演出したSFもの。撮影は「男の挑戦(1968)」の平瀬静雄。

ストーリー(キネ旬DBより)※ストーリーの結末まで記載されていますので、ご注意ください
羽田を飛び立ったジェット機が、奇怪な現象に遭遇して岩山に不時着した。副操縦士杉坂、スチュワーデスのかずみ、次期総理候補真野、精神科医百武、ニール、徳安と法子夫婦、生物学者佐賀、自殺志願の青年松宮が生き残った。
そしてもう一人、昏睡状態だった寺岡が突然、起き出した。彼は外国大使を暗殺して逃亡中だったのだが、間もなく青白い光体に吸い込まれ、顔面を細菌状の物体に犯されてしまった。そして吸皿鬼に変貌したのである。
これは、血液を常食としている宇宙生物ゴケミドロが、食糧源を求めて地球に現われたのだ。寺岡は吸皿鬼に変貌した時は、平常の顔に戻っていた。
やがて一行の許に戻ってきた寺岡によって、次々と犠牲者が出た。血を吸いとられた百武が、粘土のように変色した死体となって発見されたのが手始めだった。徳安が次に殺された。つづいて法子もゴケミドロに犯されていった。
事態を知った一行の間に、恐怖感が芽生え、発狂した松宮は自ら時限爆弾を仕掛けて吹っ飛んだ。そして、真野はニールと共にその岩山から逃亡した。だが、ゴケミドロは二人を襲い、ニールが死んで真野が戻ってきた。
一行は間もなく吸血鬼が寺岡と知り、すぎを見て杉坂は吸血鬼にガソリンを浴びせ火をつけたのだ。しかし火炎に包まれた吸血鬼の体内からゴケミドロが這い出したのを、誰も知らなかった。ホッとした一行だったが今度は佐賀が吸血鬼になって真野を殺したのである。
杉坂とかずみは、何とかその場所を逃げ出し、ある村に辿り着いた。しかし、その村にもゴケミドロの魔手がのびていた。生き残った二人は、全世界がゴケミドロによって征服されようとしているのを思い、慄然とするのだった。


『後家みどろ』と漢字+ひらがなで書くとピンク映画の題名のようだが、無論そういう映画でなくて、SF恐怖映画である。

毎回引用していて思うのだが、キネ旬DBのストーリー解説、重宝なのだが非常に読みづらいな。
「再生した映画の内容を読み取って、自動的にあらすじを記述してくれるソフト」というのがあったとしたら、きっとこんな感じだと思う。
今回はてきとうに改行だけ入れてみた。

解説にもある通り、東映の佐藤肇が撮った松竹映画である。
しかし「若社長レインボー作戦」ってどんな映画だ。
この題名を見て、若社長が七変化しながら大活躍するスパイ映画を勝手に想像しているわけだが、実際はクレイジーキャッツのサラリーマン映画を地味にしたような感じなんじゃないだろうか、多分。


話を戻すと、東映と松竹が精神的に合作したといえる本作。
そのため、両社の特長的な部分が上手くかみ合った、ちょっと変わったテイストの仕上がりになっている。
東映的な人間描写のくどさ
松竹的なカッチリ作られた特撮やセット。
ちなみに特撮には、かのピー・プロダクションも参加している。
略称ピープロ。『マグマ大使』『怪傑ライオン丸』『電人ザボーガー』『宇宙猿人ゴリ(スペクトルマン)』など、大胆かつ斬新かつ独特な作品を提供し続けた会社である。
アクの強い、手作り感満点の作風が非常に素晴らしく……と語りだすとキリがないから、知りたい人はとりあえず上記作品のどれかを観てみてください。

そんなピープロ魂がしっかりと注入された『吸血鬼ゴケミドロ』、まずは珠玉の特撮シーンを見ていただこう。

美しすぎる空。
『キル・ビル』に影響を与えたとの噂が。

宇宙猿人ゴ……ケミドロの宇宙船。
アダムスキー型空飛ぶ円盤。

宇宙人大来襲。
『マーズ・アタック!』に影響を与え(略)


特撮好きの人は、この写真を見ただけで観たくなってしまうかもしれないが、実際の内容は比較的地味。『マタンゴ』あたりを想像してもらうと近いかもしれない。


空とぶ円盤とニアミスした旅客機が、計器故障のため山中に不時着。
かろうじて生き残った数人に、吸血宇宙生物ゴケミドロが襲いかかる……というのが物語の流れ。
ここで生き残った連中が一致団結して頑張る、というふうにならないのが、この映画の味だ。

なにしろ乗客に金子信雄がいるのである。
金子信雄といえば、『仁義なき戦い』で自己保身とワガママと謀略を最大限に発揮して、登場人物たちの信頼関係をズタズタにした実績を持つ男。
そんな男が今回は国会議員の腰ぎんちゃくとして登場する。
意地悪な教頭先生的役どころで小悪党ぶりを見せつけるかと思えば、のどの渇いた国会議員に親切を装ってウイスキーを与え、あとで余計のどが渇く様をニヤニヤしながら眺める裏切りも披露。

ニヤつく金子信雄。
「の、ノドが渇くぅ!」「へーぇ(ニヤニヤ)」



人間関係の破壊といえば、金子信雄の親分である次期総理大臣候補・北村英三も強烈だ。
「わしゃぁ早く帰りたいんだ!」
と無謀な脱出行を主張して場をかき乱したり、劇中で二度吸血鬼に襲われるのだが、そのたびに手近な人間(女性含む)を
「お前が死ねぇい!」
と吸血鬼の前に突き出したりと、エゴの醜さを象徴するやりすぎ行動の数々で、観客の憎悪を一手に引き受けて見せた。


が、他の生存者がまともかといえば決してそんなことはなく、身勝手だったり壊れていたりする人間がほとんどだ。

精神分析医だといいながら、
「外には人殺しがいます」だの
「あなたも墓を掘りなさい」だの、口を開けば不吉なセリフばかり発して一同をワザとパニックに陥れる加藤和夫。

非常事態に喜ぶ加藤和夫。
医者というより患者。


大学で宇宙生物学を研究する冷静な科学者・高橋昌也は、ゴケミドロの存在を知るや、手のひらを返すように
「吸血シーンが見たい」
と他の生存者をゴケミドロの前に放り出す始末。

夫をベトナムでなくした戦争未亡人のキャッシー・ホーランは、はじめのうちこそ
「戦争はいけない」
マイク水野みたいなことを言っていたが、銃を手にしたとたんに
「私は死にたくないのよ!」
とスタコラ脱走。
途中でゴケミドロに襲われ、同行していた北村英三の裏切りにより、血を吸われて死んでしまう。

せんそうはぜったいにいけない。
『シベリア超特急』に影響(略)



恐怖感を盛り上げる目的もあろうが、人格者に見えた人間も土壇場で豹変したりして、製作者の人間に対する絶望がうかがえるキャラクターばかりが集結。
まとまりのない生存者たちは、一人また一人と命を失っていくのであった。


で、その命を奪っていくゴケミドロ。
これはアメーバ状の生物で、人の脳にズルリと入り込んでその人間を乗っ取り、他人の血を吸うのだ。

貴重な生態。
これがゴケミドロだ!


そのゴケミドロに寄生されるのが高英男である。
この映画はSF恐怖映画だが、その「恐怖」の部分を独占するのが彼だ。
映画が怖いのではなくて、高英男本人が怖い。
なにしろ寄生される前からこんなである。

爬虫類のような目。
友近を人質に取る高英男。


ちなみに本業は、紅白にも出場した柔らかな美声のシャンソン歌手であるが、東映の映画にも数本出演。
演じるのはなぜか殺し屋など爬虫類系の冷血キャラが多く、本作でも暗殺者という設定だ。

宇宙生物に寄生されて、吸血鬼になってしまう暗殺者。

こう書くとコントかと思うような設定だが、それを恐怖の枠にとどめているのは、やはり高英男のキャラの力だといえる。

獲物を狙う蛇。
闇夜のシャンソン歌手。


こんなシャンソン歌手が実際にいたら怖いが、って実際にいるのだから世の中は広い。


なお、ゴケミドロは吸血対象にこだわりはないらしく、北村英三はじめ、脂ぎった中年男性たちの首筋にも迷うことなく吸いついていくチャレンジ精神を見せた。
絵ヅラ的にはフケ専ビデオといえるが、「吸血はセックスの隠喩である」という有名な説もあるので、その趣味のある人はそういう見方で活用していただきたい。

血の吸い方は、西洋の吸血鬼のようにはしたなくかぶりついたりはせず、唇を当ててエレガントに吸う。

水木風吸血シーン。
ちゅーっ 「きゃーっ」 ワナワナワナ


その結果、なんか水木しげるっぽくなっているわけだが。
鼻息とか書き込むと、よりそれらしく見えると思う。
フハッ。




【2005.05.22 Sunday 12:15】 author : 猫パンチ | 映画 カ行 | comments(5) | trackbacks(4) |
感染◇一見さん限定。
感染 プレミアム・エディション
感染
2004年/日本/98分


監督・脚本:落合正幸
音楽:配島邦明

出演
秋葉清一:佐藤浩市
魚住晴哉:高嶋政伸
安積まどか:星野真里
立花七恵:木村多江
中園雪乃:羽田美智子
塩崎君江:南果歩
赤井潔:佐野四郎

解説: O-157や鳥インフルエンザと、近年世界を騒がす“ウィルスによる恐怖”をテーマに、病院内にまん延する未知のウィルスと、逃げ場を失う人間たちの葛藤を描く。『パラサイト・イヴ』や『催眠』の落合正幸が監督を務め、日本映画界を引っ張る演技派・佐藤浩市を主演に、高嶋政伸、星野真理、草村礼子、佐野史郎ら豪華な実力派たちが競演。外部から入り込んだ謎のウィルスはいつの間にか体を蝕んでいき、観る者すべてを恐怖で包み込む。

ストーリー: 薬の供給も追いつかない劣悪な環境の古びた病院に、奇怪な症状を患う急患が担ぎこまれる。見たこともない状態にたじろぐ医師たちを尻目に、赤井医師(佐野史郎)は“この患者の研究治療は病院の経営危機を救うチャンス”と力説するが……。
(FLiX)


劇場公開時から気にはなっていた、恐怖映画2本立て『感染』『予言』をようやく鑑賞。


舞台は、デタラメな経営がたたって傾きかかったとある病院。
注射器など医療器具の在庫は底を尽きはじめ、医師たちへの給与支払いも滞り、院長は失踪、看護士たちも状況を察して辞めるものが出はじめるといった始末で、さながら座礁して沈没を待つだけの船といった感じだ。
そんな中に残った医師や看護士たちは、激務の連続で精神をすり減らし、イライラしたりミスを重ねたりの悪循環。
ついにケアレスミスで患者のひとりを死なせてしまうに至る。

治療にあたっていた医師の佐藤浩市・高嶋政伸やナースたちは、この一件を闇に葬ることを決意。
なんでも遺体の腐敗が進めばミスの証拠もなくなるとのことで、腐敗を早めるため、暖房を派手に効かせてサウナ状態にした病室で、遺体をあっためはじめてしまう。

そんなところに奇病の急患が運び込まれてしまったものだから、事態はますます悪化していくのであった。
その奇病とは、緑色の血を流しながら体が溶解していくというダイナミックなもの。
やがて看護士たちや高嶋政伸もその病気に感染、次々と倒れたり他の人間を襲ったりしていくのだが……。


で、この映画がガッカリなのは、ってもう早々とガッカリの判定を下してしまっているわけだが、さんざん「ウイルスの正体は?」と煽っておきながら、結局種明かしをしないのである。

謎のウイルスの正体は、最後まで見てもなんだかよくわからない

妄想に取りつかれた男の見た幻覚とも取れるし、作中で言及された「精神に感染するウイルスである」というふうにも取れるし、おばけの仕業とも取れるし、佐野史郎の仕業とも取れる。
あやしい雰囲気の醸成、という意味だけなら、大いに佐野史郎の仕業なのだが。
その佐野史郎も結局正体不明で、不明尽くしの結末に、観終わってぽかーんとしてしまった人も多いんじゃないだろうか。

どうとでも取れるのは、そのように作られているからだ。
いろんな可能性だけ提示しておいて「真相は観客それぞれの頭の中に」というやつ。
これを観客に委ねるといえば聞こえはいいが、風呂敷を広げっぱなしで逃げを打っているともいえる。
決まった真相や解釈なんかはじめから用意されてなかったわけで、真剣に観ていれば観ているほど「なんじゃそりゃあ」となってしまうことになる。


なんだか文脈が悪口めいてきたが、2度鑑賞されることはハナから考えていない潔い映画だ、と言うこともできる。
1回しか観ないんだったら、雰囲気とか物語運びは最近の恐怖映画の中でも上手いほうだし、ちょっと勇気を出して怖い映画でも観てみようかなぁという人にはおすすめだ。


なお、緑のスライムがどろどろぐちゅぐちゅしているせいで気持ち悪いイメージがあるが、よく観ると、内臓だの死体の顔だのといった、本当に気持ちの悪いものはあえて一切映していないことに気付く。
特殊効果にまわる予算を出演料に食いつぶされただけかもしれないが。

奇病患者にしても、佐藤浩市らが
「全身ドロドロに溶けている!」
「溶けた顔で笑った!」
とセリフでは説明するものの、患者そのものはほとんど画面に映らないので、具体的にどうなっているのかは不明。
溶けた顔で笑う奇病患者、観たかったなぁ。


そういう意味でもやはり本作は、ホラーファンじゃない人向けのホラー映画なのかもしれない。




【2005.04.07 Thursday 21:59】 author : 猫パンチ | 映画 カ行 | comments(0) | trackbacks(1) |

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