ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団
1974年/タイ日合作/80分
原題:飛天超人
配給:富士映画
スタッフ
監督: 東條昭平 トウジョウショウヘイ
製作: 円谷皐 ツブラヤノボル
ソンポート・SAEGDUENCHAI
伊藤久夫 イトウヒサオ
脚本: 若槻文三 ワカツキブンゾウ
淡豊明
ソンポート・SAEGDUENCHAI
撮影: 町田敏行 マチダトシユキ
美術: 天沢哲三
編集: 柳川義博 ヤナガワヨシヒロ
スクリプター: 佐川和夫 サガワカズオ
堀ヨシ子
川口秀雄
佐藤貞夫
鎌田靖男
島崎尭司
助監督: 中島俊彦 ナカジマトシヒコ
照明: 佐山五郎 サヤマゴロウ
ストーリー(キネ旬DBより)
※ストーリーの結末まで記載されていますので、ご注意ください
突然、太陽の活動が激しくなり、燃えさかる炎となって、地球に接近し始めた。焼けるような太陽が降りそそぐタイ国の寺院の広場では、伝説の白猿ハヌマーンのお面をかぶった少年コチャンと友達のアナンダ2人による雨乞いの踊りが行なわれていた。ちょうどそのころ、ドーナ第七ロケット基地においても、地球の異常事態を救うため、ヴイルット博士の人工雨の実験準備が進められていた。しかし、その踊りが最高潮になったとき、三人の盗賊が寺院に侵入し、黄金の仏像の首を奪い、立ちむかってきたコチャンを殺害して逃走した。宇宙の彼方、M78星雲、ウルトラの星でこの様子を見ていた、ウルトラの母と6兄弟は、勇気あるコチャンの死を哀しみ、そっと地球に手を差しのべ、コチャンの死体に“白猿ハヌマーン”の魂を招き与えた。ハヌマーンとなって地球に帰ってきたコチャンは、3人の盗賊に復讐し、日射病によくきくサンユラントリチャワーの花を探した。一方、人工雨の実験の最中に、大爆発がおこり、それで発生した地震のために、大岩盤が2つに割れ、その下で眠っていた怪獣、ゴモラ、アストロモンス、ダストパン、タイランド、ドロボンらが姿を現わし、基地一帯を破壊し始めた。この時、サッソウとハヌマーンが現われ、5頭の怪獣を相手に戦いがはじまった。そこへM78星雲から、ウルトラ6兄弟のゾフィ、ウルトラマン、セブン、新マン、エース、タロウが飛来してきて、怪獣を全滅させた。太陽はすっかり静まり、地球には再び平和がもどるのだった。
いまは『帰ってきたウルトラマン』のことを「新マン」とは呼ばないらしい。「新マン」のほかに
「帰りマン」というあんまりな呼称もあったと思うが。
ではなんと呼んでいるのかというと、いつのまにか「
ウルトラマンジャック」という外国人ふうの名前が付けられているのである。
あんまりジャックという感じはしないのだが、円谷プロがそう言い張っているから仕方がない。まあ初めて来たのに「
帰ってきた」と言われ続けるのも気の毒なことだし。
気の毒といえば、この新マンことジャック、なんだかすごく弱いイメージがある。というのも、番組中ではほぼ毎回、登場するなり怪獣に叩きのめされたりして大ピンチを迎えていたからだ。見かねたウルトラマンやセブンがときどき助っ人に来ていた。
そんなジャックのことはさておき、本作は円谷プロとタイが合作した怪獣映画だ。
スタッフは日本人中心だが、全編タイでロケをしていて、役者も全てタイ人という変り種である。
太陽の温度が上がり、さらに
地球に接近するという異常現象のため、干ばつに見舞われる地球。
その対策として、タイのドーナ基地では、人工降雨ロケットの発射準備が進められていた。
いっぽうタイのとある村では、主人公の少年コチャンたちが雨乞いの踊りを踊っていたが、その村に3人組の泥棒が侵入。仏像の首を盗んで逃げようとするところを見つけたコチャンは彼らを追うが、拳銃で額を撃ち抜かれて殺されてしまう。
「ぎゃーーーーっ」
はるか遠いウルトラの星でこれを見ていたウルトラの母は、コチャンにハヌマーンの魂を吹き込んで生き返らせることにした。
なお、上記ストーリーでは「そっと地球に手を差しのべ」と書かれているが、実際はこんな感じ。
謎の手の出現に逃げまどう子供たち。
大パニックになっているわけだが。
『ウルトラマンタロウ』第1話のシーンを流用しつつ、ハヌマーンとして復活するコチャン。
彼が真っ先におこなった仕事は、泥棒3人組への
復讐であった。
彼らの目の前に現れたコチャンは、変身するなり巨大化。
逃げまどう3人を、
踏み潰したり握り潰したりで次々に殺害していくのであった。
この際のハヌマーンのセリフが恐ろしい。
はじめのうちは
「逃げてもムダだ!」
「仏様を大切にしろ!大切にしないやつは
死ぬべきなんだ」
など、言い過ぎの気もするが、まだ正義の味方っぽいことを言っているのだが、途中から明らかにトーンが変化する。
「お前たちを
殺してやる!」
「ほらほら悪党め、どうした〜」
楽しみはじめているのである。
あげくのはてにこのセリフ。
「そーら、逃げろ逃げろ!」
どっちが悪党だかわからないと言える。
その後、この3悪人の1人は怪作
『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』で地獄から復活。V3に蹴られたりバイクで追い回されたりする大活躍を見せることとなる。
さて、復讐を果たしたハヌマーンは、次に異常接近する太陽を止めるべく天空へ飛び立つ。優先順位が違う気もするが。
またこの太陽を止める手段が素晴らしいと言おうか独創的と言おうか、なんと
直談判である。
近付いてみると、太陽は
ヒゲのオッサンであった。
ちょっと千葉真一が入った太陽。
太陽に語りかけるハヌマーン。
「停まるんだ!お前は地球に近付きすぎている」
「そういえば、そうだ」
驚くほど素直に納得する太陽。
「お前のために、雨も降らないんだ」
「それは気の毒なことをした」
「地球から、もう少し遠ざかってくれ」
「そうしよう」
その言葉どおり、ゴゴゴゴゴと地球から離れていく太陽。
干ばつあっさり解消。
異常現象の原因は、太陽のおっさんがトボけていたからということか。
そのころタイでは人工降雨ロケットの実験を成功させた博士が、調子に乗って本番も前倒しでおこなおうとしていた。
本部からの「慎重にやるように」という要請も無視し、ロケット発射を強行しようとする博士。
秒読みが進み、
「3、2、1、0!」
発射ボタンを押したとたん、発射台に乗った数十基のロケットが
いっせいに爆発を起こす。
基地はほぼ壊滅し、しかも爆発の影響で怪獣軍団が地上に出て大暴れを始めてしまった。
駆けつけて威勢よく怪獣軍団と戦うハヌマーンだったが、さすがに多勢に無勢、たちまち劣勢に陥ってしまう。
と、そこに飛来するウルトラ6兄弟。
「大丈夫か、ハヌマーン!」
あ、言い忘れていたが、この映画ではウルトラ兄弟は
言葉を喋る。
そのため、戦闘でも「シアッ」とか「ヘアッ」とか言わず、
「てぇいっ!」
とか言っている。
ともかくそうしてウルトラ兄弟に助けられたハヌマーンは、力を合わせて怪獣軍団に反撃を開始するのだった。
さてロケットはほとんど爆発してしまい、もはや守るものもないかに思えた基地だったが、まだ重要な施設が残っていた。
ロケット用の特殊燃料が詰め込まれたタンクである。
これが爆発しては、こんどこそ基地は壊滅してしまうだろう。
だが、ハヌマーンはじめ、現場の連中はそんな大事な施設があることを
誰ひとり知らなかった。
基地内でおろおろ見守る博士の心配もむなしく、ついに引火する燃料タンク。
大爆発の中、
「ばくはつするぞぉ〜、あははははははは」
ついに
発狂してしまう博士であった。
いっぽう怪獣軍団は、爆発に巻き込まれて戦力が落ちたところを、ハヌマーンに蹂躙(じゅうりん)されていく。
ある者は八つ裂き光輪で首や両腕を切り落とされ、またある者は
ウルトラマンとハヌマーンに皮をはがれて骸骨と化してしまう。
ハヌマーン「骸骨にしてやるぞ!」
そうして怪獣軍団は殺戮されていき、残るはゴモラただ1体となる。
反撃するゴモラの姿にかぶさるナレーション。
「最強の怪獣ゴモラには、もっと恐ろしい超能力がある。
それは、
恐怖の怪獣念力だ!」
なんだそれは。
怪獣念力によって不思議な空間に引きずりこまれ、
謎の踊りでその場を打開しようとするハヌマーン(違うかもしれないが、
そうとしか見えない)。
そこへウルトラ兄弟が合体光線を発射、念力は打ち破られた。
こうなるとあとは7対1、戦いにもならない公開処刑である。
逃げまどうゴモラをふんづかまえて、蹴りまわすは殴り倒すはと存分にいたぶったあと、ハヌマーンの光線で真っ二つにして倒すのだった。
戦いが終わり、ウルトラ兄弟が直立不動で見守る中、ひとしきり勝利の踊りを踊るハヌマーン。
やがて踊り終わるとウルトラ兄弟とハグを交わし、兄弟は再び宇宙に飛び去っていくのであった。
戸惑い気味のウルトラ兄弟。
クレジットを見てわかるように、円谷プロのスタッフ中心に作られているためか、
『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』ほどムチャクチャではないが、それでも我々日本人から見ると
「これは違う」と思わざるを得ないシーンが次々飛び出してくる本作。
細かいことを言うと、ロケット基地の職員の制服が『ファイヤーマン』の隊員服(たぶん)だったり、ロケット操縦士の服が『ウルトラマンタロウ』の隊員服だったりするのも妙な感じである。
またこの操縦士2人組、コメディリリーフ要員なのだが、片方がどうしても
大泉滉に見えて仕方がなかった。東映映画の観すぎと言える。
しかももう一人の声が
滝口順平で、視覚・聴覚両面から大いに刺激された2人組であった。
なおこの映画、現在なぜか版権は円谷プロではなくタイ側にあるらしい。
『ウルトラセブン』12話と同じく、今後公式な記録から消滅することも予想される本作。大きなレンタルビデオ店に行けばまだ置いてあるところもあるはずなので、興味のある人は、観れるうちに観ておくことをお奨めする。
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