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【2015.04.27 Monday 】 author : スポンサードリンク | - | - | - |
死霊の盆踊り◇踊るアホウに見るアホウ。
死霊の盆踊り デラックス版
死霊の盆踊り
1965年/アメリカ/91分


原題:ORGY OF THE DEAD

監督:A・C・スティーヴン
原作・脚本:エドワード・D・ウッド・Jr
美術監督:ボブ・ダーテノ
振り付け:マーク・デズモンド
撮影監督:ロバート・カラミコ

出演:
クリズウェル(夜の帝王)
ファウン・シルヴァー(闇の女王)
ウィリアム・ベイツ(ボブ)
パット・バリンジャー(シャーリー)
ロン・チェイニー・Jr(たぶん狼男)

内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより):
エド・ウッドが脚本を手掛けたくだらなさ全開のホラーコメディ。ホラー小説家・ボブは婚約者のシャーリーと共に、小説のアイデアを求めて雨の墓地に向かうが、交通事故に遭ってしまう。そんな彼らの前に暗黒の女王が現れ、死者たちが次々と踊り始める。


美女金粉ショー。
タイトル画面。



『死霊の盆踊り』という邦題、いかにも適当につけましたよという響き満点だが、原題『ORGY OF THE DEAD』を直訳すれば『死人の乱痴気騒ぎ』
ニュアンス的に大差ないのであった。
じっさい、内容もそんな感じだ。


あらすじはほとんど上記引用の通りで、文章にするとたったあれだけ。

しかし上映時間は90分。


これがどういうことかというと、たったあれだけの内容を90分かけてやるということである。
しかも「〜〜交通事故に遭ってしまう。」までのくだりは冒頭5,6分程度で消化。
残りの「死者たちが次々と踊り始める」という部分が、なんと映画の80分以上を占めるのだ。
なんと恐ろしいことだろう。

映画の冒頭で、眠そうなクリズウェルが
「これから話す物語は、気を失うほどに恐ろしい
と語るが、観客の身に降りかかる災難という意味では、まったくおっしゃるとおりだといえる。

もう朝かい……むにゃむにゃ
起きぬけのおじいちゃん。



その恐ろしさを体感してもらうために、ある実験をしてみよう。

この映画のビデオテープをデッキに入れて、再生しないでそのまま「早送り」をし、適当なところでいきなり再生してみるといい。
するとどうだろう。
どのタイミングで再生ボタンを押そうが、かなりの確率で踊りのシーンばかりが映し出されるのである。

こんな感じだ。

おぅいぇい。
ノリノリな死霊。

ぶるんぶるん。
オッパイぶるぶるぶる。

興奮の要求。
もっとなのか。



クリズウェルの余計な要求に応じて、延々いつまでも踊りばかりを見せられる苦行。
これを恐怖映画といわずしてなんと言おうか。



こんな戦慄すべき映画の原作・脚本を担当したのは、史上最低の映画監督として名高いエド・ウッドだ。
話が進展しているのかいないのかわからないまま進んでいくストーリーや、大仰すぎて言っていることの内容がよくわからないセリフ回しなど、わからないことづくめのエド節は、ここでもいやというほど健在である。

監督A・C・スティーブン(別名スティーブン・アポストロフ)も負けてはおらず、冒頭ではこんな素晴らしいカット割りを見せてくれる。

昼間1。
白昼、走り抜ける自動車。



真夜中。
その車内は真夜中。



昼間2。
しかし照りつける日差し。


いったい昼なのか夜なのか

その後のストーリー展開からすると、このシーンは夜のはずなのだが、こういう昼夜ごちゃまぜはラリー・ブキャナン監督『2889年』『恐怖の洞窟』ほか)もよくやっているので、あまり深く気にしないことにする。

この後、理由のわからない事故(何もないところで勝手に「うわーーっ」とハンドルを切って転落)により、夜の墓場に投げ出されるボブとシャーリー。
ちなみにシャーリーというのは、エド・ウッドが女装したときによく名乗っていた名前なんだそうだ。


その墓場に現れたのは、黒衣の男・クリズウェルと、彼に付き従う闇の女王であった。
クリズウェルが何者なのかは、作中で言及がないのでよくわからないのだが、どうも夜の世界の偉い人であるようだ。
「今夜の宴に余が満足できなければ、彼女たちの魂を地獄に落とすぞ」
これから始まるのは、彼を満足させるためのパーティーである様子。
闇の女王が手をパンパンと打つと、それを合図にハダカのお姉ちゃんが出てきて踊りだすのであった。

……って、エロ親父とそれを接待してるやり手ばばあみたいな図なんだが。

助平親父と遣手婆。
ストリップを楽しまれる夜の帝王。


お姉ちゃんたちは、一人ずつ交代で出てきては、過剰なほどたっぷりとハダカ踊りを見せてくれる。
どうやら彼女たちは、みな死人らしい。
踊りを見物しながら、お姉ちゃんたちの素性を解説する闇の女王。

「彼女は金だけを崇拝した女」
「彼女はヘビと煙と炎を崇拝する女」
「彼女は猫を愛して猫になった女」

どいつもこいつもアレな女ばかりなわけだが。
ちなみに猫を愛して猫になった女は、踊りながらムチ打たれていた。

ぴしり!にゃー。
「猫になった」といわれても。



そんな常軌を逸した宴の様子を、物陰から眺めていたボブとシャーリーだったが、クリズウェルの手下の狼男とミイラ男に捕らえられ、柱に縛り付けられて、無理やり宴を見物させられてしまうハメになる。
はからずも観客と同じ立場になったわけで、さぞ苦痛を味わうことだろう……と思いきや、ハダカ踊りを目の当たりにして、けっこう喜んでいるボブなのであった。

「おぉっ、なかなか……」
やに下がる我らがボブ。



さてクリズウェルは、夜明け、すなわち宴の終わりとともに2人を殺して、死霊の仲間入りをさせると宣告する。
夜明けが近付き、シャーリーを好きにしてよいと言われた夜の女王は、彼女を殺してしもべにしようと、刃物を手に彼女に迫る。


……のだが、殺す前になぜかひと踊りはじめてしまう闇の女王。
いましめを解いたボブは、そのすきに飛び掛ろうとするが、ミイラ男や狼男にあっさり取り押さえられてしまう。


結局、そんなことをしている間に夜が明けきってしまい、朝日を浴びた闇の女王やクリズウェルは骨になってしまうのであった。

ナキガラ。
威厳のかけらもないホネ。


なんたる脱力。
水木しげるの漫画で同じようなオチを見た覚えがあるが。


なお、夜の帝王を好色ムードいっぱいに演じたクリズウェルは、エド・ウッド映画の常連俳優であり、この映画にもエド人脈で参加したらしい。
普段から棺桶で寝起きしている男で、本作をはじめ、映画でもよく棺桶から登場していた。

下記参考文献によると、『死霊の盆踊り』撮影の際、彼はセリフを一切覚えないで現場に現れ、仕方がないのでカンペを読みながら演技をしていたという。
うんとよく言えば丹波哲郎みたいであるが、道理でときどき目が泳いでいるわけだ。

しかも子分を一人連れてきていて、セリフを言うたびに「ブラヴォー」と歓声を上げさせていたとか。
面白い光景だったろうな、撮影現場。

正直。
実も蓋もないが名言。




参考文献:
早川書房「エド・ウッド 史上最低の映画監督」
エド・ウッド―史上最低の映画監督
エド・ウッド―史上最低の映画監督
ルドルフ グレイ, 稲葉 紀子 訳





【2005.07.28 Thursday 21:16】 author : 猫パンチ | 映画 サ行 | comments(12) | trackbacks(3) |
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【2015.04.27 Monday 21:16】 author : スポンサードリンク | - | - | - |
コメント
ヤバイヤバイ!猫パンチマジックで買ってもいいかなと思っちゃいました。
あぶねー(笑
ただ踊ってるだけの映画をここまで…
やっぱり猫さんのレビュー素晴らしいですよ。
「ぴしり!にゃー。」がツボに…かわええ(笑
【2005/07/28 10:36 PM】 バビゾ |
>バビゾさま

いや、くれぐれもこの映画だけは(笑)
普通に観ると、本当に退屈ですから。

この猫になった女のシーンでは、かかってる音楽が猛烈に呑気で、なんというか……もう経験したこともない居心地を体感できますよ。踊りもかわいいです(笑)
ていうかこの映画、あれを「猫になった」と言い張るあたりが大好きですな。
【2005/07/28 11:01 PM】 猫パンチ |
出したわね、とうとう。
私はこの映画のレビューは高度な技術が必要だと思ってたので、ボムガを閉鎖するときに(その頃には多少文章も上手くなってるはず)と決めてたんだが、猫さんのレビュー読んで「こんなに書けない!」と思ったからやっぱタメた(笑

これ何回も見てるんだよねー。
なかなか寝つけないときにさ。だいたい10分くらいで深い眠りにつけるもん。寝つきが悪い人にはもってこいだよね。
【2005/07/30 4:06 PM】 めけ。 |
>めけ。さま

ええ、やってしまいました。
高度な技術って(笑)
高度かどうかはともかく、たしかに踊ってるだけの映画なので、ふくらませるのは難しかったですな。
画像で逃げを打ってる部分はあります。

最後のエントリー予定が『死霊の盆踊り』ってのもすごいですな。ある種やりにげみたいな(笑)

>なかなか寝つけないときにさ。だいたい10分くらいで深い眠りにつけるもん。

うはは、たしかに。
ぼくもインディアン娘から先は、なかなか観れないです(笑)また音楽も踊りも、絶妙に退屈ですもんねぇ。
作ろうと思って作れるもんじゃないですね、これはやはり。
【2005/07/30 6:17 PM】 猫パンチ |
またレビューするのに根性がいるような作品を(爆笑)。しかも、このレビューを読むと見てしまった私さえ、猫パンチ・マジックで面白い映画であるように思えてしまうから不思議です(笑)。
まだ弱小配給会社だった頃のギャガにいた江戸木純がこの邦題をつけたということは有名ですな。ギャガもその頃とは全然考えられないようなまっとうな会社(笑)に、江戸木純もペン・ネームも含めてエド・ウッドのおかげで食っていってるような。
クリズウェルの話、映画の登場人物を地で行ってるみたいですな(笑)。世の中、まだまだ広いと思わせてくれます。
【2005/07/30 11:55 PM】 サンタパパ |
>サンタパパさま

今回はレビュー以前に、観るのにかなり根性が要る映画でした(笑)

クリズウェルはもともとニュースキャスターで、番組で時間が余ったときにアドリブで「ここからは明日のニュースをお伝えします」と適当なニュースを喋ったらそれが当たり、以来予言者とか霊媒師みたいな活動をしていたという人なんだそうです。
知れば知るほどいい加減な人物ですな(笑)
【2005/07/31 3:49 AM】 猫パンチ |
遅いコメントで何ですが……。
これはうちの知人の間でも、一種、伝説の映画でして、
伝説だから、ホントに観た人間は少ないという。
いえ、私も見てしまった一人なんですが(笑)。
連れのホラーファンは傑作と呼んでいます。
確かに、何か突き抜けてしまって
そのままもう帰って来ない、という点では、
私もやはりこれは傑作であろうと思います(大笑)。
【2005/08/03 1:44 PM】 acoyo |
>acoyoさま

いやいや、うちはいつなんどき、誰のコメントでも受けます。って猪木か。
たしかに実際に観た人は少ないかもしれませんね。「つまらない」という宣伝文句のせいもあると思いますが(笑)

本編は掛け値なしにつまらないので、過剰に持ち上げすぎるのもキケンですが(笑)、映画の一つの形として観ておくべきではありますな。
【2005/08/03 9:38 PM】 猫パンチ |
もう、爽やかな感動すら覚えるほどの、ツっこみすぎて口が疲れる映画ですね(笑)
なんだか愛を感じます・・・。
【2005/09/02 9:23 AM】 ルー |
>ルーさま

お返事遅くなってしまってすみませんでした。
こういう映画は、観終わって怒る人と嬉しくなる人がいると思いますが、ぼくはもちろん後者なのでこんな感じのレビューになってます。
怒った人のレビューと較べてみるのも一興かもしれません。

とはいえ、怒るにしろ喜ぶにしろ、最後まで観たんだったら、どっちにしろ大したもんだといえますな(笑)
【2005/09/06 6:28 PM】 猫パンチ |
ホラーを見ると覚悟して見たら
全く怖くない。
でも、でも、誰かに言いたくなる
見る時、唖然、後から爆笑です。
【2009/10/08 12:28 PM】 みみ |
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